米粉の可能性を科学で拓く——摂南大学 山田徳広教授と図司穀粉の挑戦
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パンやスイーツ、そして麺。日本人の食卓でなじみ深いこれらの食品に、いま「米粉」が再び注目を集めています。摂南大学農学部 食品栄養学科で食品加工学・応用栄養学を専門とする山田徳広教授は、米粉を活用したグルテンフリー食品の研究・開発を精力的に進める第一人者です。その取り組みには、図司穀粉との密な連携もありました。

グルテンフリー研究の原点と米への着目
山田教授が米粉の研究に取り組むようになった背景には、世界中で増加するグルテン不耐症・小麦アレルギーの存在があります。
「パンやスイーツを食べたくても食べられない人が、世界にはたくさんいます。そんな人たちに届けたいというのが出発点でした。」
そこで着目したのが、日本人にとって最も身近な食材「米」。特に小麦に比べて収穫効率が良く、国産での自給も可能な点は、将来的な食糧安定にも寄与すると考えたといいます。
米粉100%パンの開発——ふくらむが、柔らかくならない

山田教授が特に注力しているのが、米粉100%パンの開発です。小麦を一切使わないパンの製法は、思いのほかシンプルで「こねて、発酵させて、焼くだけ」と言います。
「「実は小麦パンよりも、米粉100%パンのほうが簡単なんです。ただし最大の課題は“柔らかさの維持”です。」
2斤サイズの食パンを膨らませることには成功していますが、時間が経つと固くなってしまうという問題が残ります。その克服のために、山田教授は品種の選定や製粉方法、添加材料の組み合わせなど、さまざまな実験を重ねています。
図司穀粉との出会いと共同研究

そんな中、山田教授の研究に欠かせない存在となったのが、京都の製粉所「図司穀粉」です。
「全国の製粉業者を調べて声をかける中で、図司穀粉さんに興味を持っていただきました。製粉方法も柔軟に調整してくれて、すごく研究に協力的だったんです。」
最初に依頼した際は、品種「ミズホノチカラ」を使い、粒度を4段階に分けて製粉。焼き上がりの違いを比較検証しました。図司穀粉側も
「先生のパンがふわっと膨らんで本当に美味しかったので、こちらも気合が入りました」と語ります。
原料米の品質が仕上がりを左右する

研究を通じて明らかになったのは、製粉技術と同様に原料となるお米の品質が大きな影響を与えるということ。
「米が悪ければ、いくら技術が良くても美味しいパンにはなりません。」
コバタケファームのように、標高の高い山奥で育てたお米はパンの焼き上がりも良好だったといいます。高温障害の出にくい地域での栽培や、農家による管理の徹底も重要な要素です。
玄米粉とスイーツへの展開
近年では、枚方市のバウムクーヘン店と連携し、玄米粉を使ったバウムクーヘンの開発にも挑戦。図司穀粉が製粉した玄米粉が評価され、試食では「美味しすぎる」と好評だったそうです。
「精白米より玄米の方が風味や個性が出る。しかも“玄米スイーツ”という印象の良さもあります。」
スイーツは日常的な食ではない分、入口としては広がりやすく、小麦アレルギーの子どもたちにも優しい選択肢となる点で注目されています。
麺への応用と課題

現在、新たに取り組んでいるのが米粉麺の開発です。東南アジアではフォーなどの文化がありますが、日本人の好む「うどん」や「焼きそば」スタイルへの展開には、まだ課題があります。
「焼きそばのような米粉麺を作ってと言われるんですが、茹でた後に炒めるとブツブツ切れてしまう。茹で汁も濁るし、小麦と同じ設備では作れない。」
流通や保存の観点からも、今後の設備投資や製法開発が必要になると見ています。
科学的アプローチが技術を底上げする
図司穀粉にとって、山田教授のアプローチは製粉技術の進化にも大きく貢献しているといいます。
「料理教室の先生は“どう簡単に作るか”を重視するけど、山田先生は“なぜその現象が起こるのか”から考える。だからこちらも一緒に技術力が上がっていくんです。」
同じ製法で材料もシンプルだからこそ、原料の違いが見えやすく、フィードバックの精度も高まります。
米粉の未来へ——伝統と進化の両立

山田教授は米粉の将来についてこう語ります。
「伝統的な和菓子に使われてきた米粉の文化は、守っていくべきもの。一方で、パンや洋菓子への展開で新たな進化を遂げる必要もあります。」
国内ではもちろん、グルテンフリー需要の高い海外市場や、人口増加が続くアジア・アフリカにおいても米粉食品の需要は確実に増えると予測。素材から始まる科学的アプローチと、多様なパートナーシップが、その未来を支えています。